MT車に乗りたいと思っているものの、ネット上に「AT限定解除は難しい」という声が多く、不安に感じている方もいるかと思います。
そこで本記事では、AT限定解除を行った筆者の経験も踏まえ、少しでもスムーズに限定解除するための段取りからMT車運転のポイントをまとめました。
「AT限定解除しようと思っているんだけど、難しそうだし、どうしよう…」と思っている方のヒントになれば幸いです。
オススメ動画も併せて紹介しますので、予習・復習や疑問解消に活用してもらえればと思います。
教習を受ける前に
入校から卒業検定まで短期間で終わるように日程を組む
教習から検定まで、短期集中で終わらせることが大事です。
AT限定解除における教習は技能教習4時限のみとなっており、短時間で卒業検定に合格できるレベルにする必要があります。そのためには感覚を鈍らせないよう、教習4時間から卒業検定までの期間をなるべく空けないことが重要になってきます。
ただし、「道路交通法」の規定により、技能教習は原則として1日2時間まで(条件つきで3時間まで)と定められているため、少なくとも技能教習を終わらせるのに2日かかります。卒業検定の日数も含めると、最低3日は教習所に通う必要があります。
筆者の場合は2日連続で2時間ずつ教習を入れ、1日空けて卒業検定を受けるようにスケジュール調整しました。技能教習1時間目から卒業検定まで、4日で終わるようなスケジュールです。
予習・復習をする
予習・復習が面倒くさいという気持ちはよく分かります。ですが、実車で練習できるのは4時間だけです。また、MT車の運転はAT車よりも難しいです。
教習時間内では「頭脳での理解と運転技能のギャップを埋める時間」とするためにも、できなかったことや苦手だと感じたことはネットで調べたり、教官からアドバイスを求めたうえでメモを取るなど、教習時間外の能力向上に努めましょう。
また、イメージトレーニングを行うのも効果があるかと思います。
クラッチペダルとは何なのかを理解しておく
AT車とMT車の最大の違いと言っても過言ではないのが、クラッチ操作です。
クラッチはエンジンの動力をタイヤに伝えたり、切り離したりする役割をしており、ペダルを上げると動力が伝わります。反対に、ペダルを踏み込むとエンジンからの動力はタイヤに伝わらなくなります。
また、アクセル・ブレーキは右足で操作しますが、クラッチは左足で操作します。
発進時にはクラッチ操作を丁寧に行わないとエンジンが止まってしまう、「エンスト」を起こしてしまいます。
主な教習内容とポイント
AT限定解除の教習は「MT車を運転するために必要な技能の習得」になります。学科教習はなく、技能教習4時限(内、みきわめ1時限)となります。
主な教習内容は、
- 発進・停止
- ギアチェンジ
- 坂道発進
- S字・クランク走行
です。尚、AT限定解除審査には路上教習はありません。
発進・停止
AT車であれば「Dレンジ」に入れてブレーキペダルを放すだけで発進できますが、MT車の場合はアクセルとクラッチ操作が発進時に必要になります。
また、AT車はブレーキペダルを踏むだけで停止できますが、MT車はある程度速度が落ちたらクラッチぺダルを踏み込まないとエンストしてしまいます。
AT車の発進方法とMT車の発進方法の違いをまとめると、次の通りになります。
- 「D」にギアを入れる
- サイドブレーキが引いてある場合、解除する
- ブレーキペダルを放す
- 発進できる
- 「1」にギアを入れる
- サイドブレーキが引いてある場合、解除する
- 右足をブレーキからアクセルに移し、軽く踏んだ状態にする
- クラッチペダルをゆっくりと、半クラッチまで上げる
- 5km/hぐらいになったらクラッチを繋ぎきる
- 発進できる
発進・クラッチ操作のコツ
MT車を運転する上での最初の難関はクラッチ操作かと思います。
アクセルペダル・ブレーキペダルの操作は、かかとを支点にしながら踏み込み量を調整して操作します。
一方、クラッチペダルは左足全体を上げ下げして踏み込み量を調整して操作します。特に、クラッチを繋ぐ際は「左足をゆっくり上げる」のではなく、「左ひざをじわじわと曲げていく」というのが運転のしやすいクラッチ操作になります。
脚力に自信のない方でも、この方法を実践するとクラッチ操作しやすいかと思いますし、これをマスターすれば、クラッチ操作も苦ではなくなります。
筆者自身もこの方法を知ってから、エンストする確率がグッと減りました。
下記の動画が非常にわかりやすいので、そちらも見てみてください。
ギアチェンジ
MT車の運転は自転車に乗るときのように、ギアを自分で変えながら走行します。
ギアの選び方は自転車とほぼ同じで、速度が低いほど「1」に近いギアを、速度が高いほど「5」に近いギアを選びます。
また、登り坂でも自転車と同様に、平坦な道を走行するときよりも低いギアを選びます。
AT限定解除審査は場内でしか教習がないため、最大でも3速までしか使用する機会がないかと思います。
ギアチェンジのコツ
AT車では運転中にシフトレバーを操作する機会がほぼないため、最初の頃は入れたい位置にギアが入っているか不安になるかもしれません。
ですが、MT車のシフトレバーは手元を見なくても、確実にシフトチェンジできるような構造になっています。
- 発進時、1速に入れるときはシフトレバーを助手席側に倒し、前に押し込む。
- 1→2速にするときはシフトレバーを助手席側に倒しながら、後ろ側に引く。
- 2→3速にするときはシフトレバーをニュートラルに戻したあと、前に押し込む。
本記事では場内で使用する範囲内のシフトアップの仕方のみ記述しましたが、運転教本が手元にある方は、そちらの方もぜひ確認してみてください。
また、下記の動画にもシフトチェンジのコツについて解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
坂道発進
MT車の教習において、最大の難関とも言えるのが坂道発進です。ですが、場内であれば、落ち着いて丁寧に発進すれば大丈夫です。
MT車の坂道発進は、AT車と比べて手順が多く、一つ一つの動作を確実・丁寧に行うことが重要になってきます。
MT車での坂道発進は、次の手順で行います。
- 停車したら、サイドブレーキを引く
- ブレーキペダルをゆっくり緩め、後退しないことの確認
(後退する場合は、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込み、もう少しサイドブレーキを強く引く) - ギアを「1」に入れ、回転数が2,000~2,500程度でアクセルキープ
- エンジンの音が低くなるまで、ゆっくりクラッチペダルを上げる
- アクセル・クラッチをキープしながら、サイドブレーキを解除する
- 発進できる
- 坂を登り切ったら左足を完全に上げる
坂道発進のコツ・ポイント
坂道発進では、
- とにかく慌てない
- アクセルを2,000~2,500回転程度にキープし、半クラッチまで丁寧に持っていく
- 半クラッチ状態でサイドブレーキを下げ、ある程度速度が乗ってからクラッチを繋ぎきる
がポイントです。
特に、「ある程度速度が乗ってからクラッチを繋ぎきること」というのは坂道に限らず、発進の基本です。
S字・クランク走行
初めて免許を取る際は車両感覚を掴むことが主な目的ですが、限定解除教習ではMT車で低速走行するために必要な「断続クラッチ」の習得が主な目的となります。
ただし、卒検時に脱輪すると減点されるのはAT限定解除審査でも同じですので、脱輪しないよう注意しましょう。
狭路走行・MT車の低速走行のポイント
S字カーブやクランクなどの狭路走行を行う際、AT車ではブレーキペダルの踏み加減を調整し、走行していたかと思います。
一方、MT車の場合はアクセルペダルを軽く踏んだ状態でクラッチペダルの踏み加減を調整し、狭路を走行します(断続クラッチと言います)。
ポイントは、「速度を下げる場合でも、アクセルの踏み加減は変えない(緩めない)」ということです。
狭路を低速で走行する場合、クラッチペダルを上げればより動力が伝達するため、速度が上がります。一方、クラッチペダルを踏み込めば動力が伝達しなくなることに加え、路面からの抵抗を受けるため速度が下がります。
また、低速で走行する場合、アクセルを緩めてしまうとエンストしてしまう確率が高くなってしまいます。このため、アクセルは緩めずにクラッチペダルの踏み加減で速度調整を行います。
この感覚はAT車に慣れていると違和感を感じるかと思いますが、頑張ってマスターしましょう。
卒業検定の内容と注意点
卒業検定は100点満点中、70点以上で合格です。また、AT限定解除審査の卒業検定は場内走行のみです。イメージとしては、仮免許取得前の「修了検定」に、方向転換(車庫入れ)を追加したような感じです。
ざっくりまとめると、次のような感じです。
- 外周走行
- 交差点の走行
- 進路変更
- S字・クランク走行
- 方向転換(車庫入れ)
- 坂道発進
- 踏切横断
この中でも特に注意しなくてはいけないのが、「S字・クランク走行」、「坂道発進」、「踏切横断」です。
まず、S字・クランク走行について。脱輪すると20点減点されます。つまり、このミスをすると、残り10点分しか余裕がないため、細かいミスが許されなくなってきます。
次に、坂道発進について。エンストなどにより後退してしまった場合、後退した距離によって点数が引かれますが、1m以上後退してしまった場合は即検定中止になります。
最後に、踏切横断について。踏切内でギアチェンジすると5点減点、踏切内でエンストした場合は即検定中止になります。
その他、即検定中止となる項目としては、信号無視、一時不停止、踏切不停止などがあります。
減点項目の詳細については、こちらから確認することができますので、卒業検定前に一度チェックしておきましょう。
まとめ
4時間という少ない時間でスムーズにAT限定解除するには「短期集中で行うこと」と「予習・復習を行うこと」が特に重要です。
技能面は練習あるのみですが、クラッチ操作は左ひざの使い方が重要です。また、MT車の運転はクラッチ操作とアクセル操作をどれだけ上手に行えるかが重要です。
これらを実践すれば、少しでも早くMT車の運転が上達するかと思います。
余談:無事限定解除出来たらすぐにMT車を運転しよう
無事に限定解除を済ませたら、期間を空けずに公道で練習しましょう。と言うのも、やはり、4時間の教習では体が運転方法を覚えきらないからです。
筆者の場合は免許更新が近かったため、その前に限定解除を行いました。
しかし、限定解除を済ませてから約4か月ほど、全くMT車を運転せずにGR86のMT車を試乗しようとしたところ、発進すら安定してできないレベルまでになっていました。
AT車が主流となった現代では、MT車のレンタカーを探すのが非常に難しいです。
私用でMT車に乗りたいという方は、車両購入のタイミングに合わせて限定解除したり、MT車の練習に付き合ってくれるような人脈を作ったりすることが必要かと思います。
筆者の場合、納車までに半年ほどの期間があったため、総額20万円で軽自動車のMT車を購入し、GR86の納車まで毎日のように練習していました。
公道でするべき練習内容については、下記ページにまとめましたので、そちらも参考にしてもらえればと思います。
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