ホンダと日産、三菱が経営統合を行う可能性があるということで話題になっています。
X(旧:Twitter)上では、「企業名はどうなるのか」「ホンダにとってはメリットはないのではないか」など、様々な投稿が見られます。
本記事では経営統合に企業名や、今後の経営方針の予測をまとめてみました。
社名変更について
ホンダ・日産・三菱のブランドは残る
今回ニュースになっているのは「経営統合」であり、「合併」ではありません。
そのため、ホンダ・日産・三菱の3社はそのまま社名として存続することになります。
ネット上で話題になっている「ホッサン」や「ニホンダ」というブランドになるということではありません。
経営統合と合併の違いについては後述します。
「経営統合」と「合併」の違い
経営統合
経営統合とは、複数の会社が特定の一社に自社株式を集中させ、各会社を存続させたまま意思決定機関を統一する手続きです。
統合しようとする会社は、それぞれ協議して統合先を決めます。その上で、各会社の株式を統合先が100%取得することで、各社は純粋持株会社を完全子会社化します。以上のプロセスを終了した段階で、各会社は兄弟会社となり、純粋持株会社とは完全親子会社となります。
今回の場合に当てはめると、ホンダ・日産・三菱の3社を残しつつ、経営の根幹になる親会社を新設するということになります。
そして、新設した親会社が各社の株式を100%取得することで、ホンダ・日産・三菱は兄弟会社となります。
合併
合併とは、複数の会社が1つの会社となり、いずれか1社または新設会社だけを残し、残りの当事者会社は法人格を消滅させる手続きです。
既存の1社に吸収させる「吸収合併」が一般的ですが、許認可・免許の継承や上場の再審査が必要なく、対等な関係での合併を必要とする時は、新設会社を利用する「新設合併」とする場合があります。
今回の場合に当てはめると吸収合併の場合、「ホンダ」「日産」「三菱」のどれかに統一され、残り2社の名は消えるといった感じになります。
また、新設合併になる場合、ネット上で噂になっている「ホッサン」「ニホンダ」など、新しい会社になり、既存の「ホンダ」「日産」「三菱」の名は消えることになります。
経営統合のメリット
考えられる経営統合のメリットとして、下記の3つが挙げられます。
- ●独立性・自主性の維持
- ●経営の効率化
- ●研究開発・技術力の向上
(引用:経営統合とは?合併との違いやメリット|M&Aキャピタルパートナーズ)
独立性・自主性の維持
経営統合の場合、それぞれの会社が持つ独立性や自主性を維持したまま運営を続けられます。
そのため、各会社が元々持っていたブランドや企業文化を維持し、企業イメージや製品・サービスの大幅な変化に対する不安を顧客に与えることがありません。
例えば日産ではGT-RやフェアレディZなどのスポーツカーを販売していますし、三菱ではデリカD:5やトライトンのような、悪路に強い車種を販売しています。
これらメーカーを代表する車種のイメージを崩さずに済むというのは、経営統合のメリットではないかと考えられます。
経営の効率化
新たに設立された親会社がグループ全体を見ながら戦略作りをするため、業務の効率化を図ることができます。
SUVを例に出すと、ホンダ・日産・三菱ともに、それぞれが設計開発した車種を販売しています。
それぞれの会社が単独で開発を進めるとコストがかさんでしまいますが、経営統合を行うことにより、各社がそれぞれの車種名で販売しながらも、開発コストを抑えやすくなると考えられます。
研究開発・技術力の向上
ホンダと日産は脱炭素化に向けて、電気自動車開発に注力しています。
また、三菱もPHEVを販売しています。
各社の技術を持ち寄ることでガソリン車やハイブリッド車だけでなく、EV車の開発もしやすくなるでしょう。
経営統合のデメリット
考えられる経営統合のデメリットは、下記の2つです。
- ●組織が複雑化する
- ●同部門が重複しがちになる
各会社がそれぞれ存続する以上、組織の複雑性による生産性への悪影響と、同部門の重複による費用増加のデメリットがあります。 どのように問題を解消していくか、あらかじめしっかりと検討・検証しなくてはなりません。
(引用:経営統合とは?合併との違いやメリット|M&Aキャピタルパートナーズ)
組織が複雑化する
総務など、グループ内に1つあれば十分と思われる部門が重複してしまう場合があります。
また、ホンダ・日産・三菱のそれぞれが子会社として独立しており、各社での業務の同時進行も必要であることから費用が過剰になりやすいと考えられます。
一方、無理に部門を統合してしまうと業務がひっ迫してしまう可能性もあります。
そのため、部門状況や統合費用を精査し、最適な形で組織統合を果たせるかが、今後の課題となってきます。
同部門が重複しがちになる
3社ともSUVを製造販売しています。また、軽自動車やEV部門など、重複している部門が多数あります。
各社が同一タイプ(SUVなど)の自動車を製造するのは業務上、効率が悪いと言えます。
経営統合する上で、これら重複している部門をどのように整理していくかは今後の課題と言えそうです。
経営統合後はどうなる?
軽自動車はホンダが中心になると予想
2024年における軽自動車売上げ台数トップ15のうち、ホンダ車は「N-BOX」・「N-WGN」がランクインしています。
特に「N-BOX」は売上げ台数1位を誇っており、年間売上げ台数は206,272台と圧倒的です。
この台数は、日産ルークス・三菱デリカミニ/eK・日産デイズ・日産サクラの4車種を足し合わせるよりも多い台数となっています。
そのため、軽自動車の製造開発はホンダ主体になり、日産・三菱の軽自動車は一部車種を除き、ホンダのOEMになるのではないかと考えられます。
スポーツ部門・エコカー部門はホンダ・日産協業と予想
日産はフェアレディZやGT-Rなど、花形とも言える車種があります。
一方、ホンダにもシビックタイプRを販売しています。
また、通常車のシビックには「SPORTS e:HEV」を採用していることから、電気自動車におけるモータースポーツを見据えているかもしれません。
日産もこれまで、電気自動車の開発にはかなり注力してきたと考えられますし、両社のノウハウを掛け合わせれば、モータースポーツ部門・エコカー部門において大きなシナジー効果を得られる可能性もあります。
三菱は4WDに特化か
三菱と言えば、デリカD:5やトライトンなど、悪路走行性能の高い車種を複数販売しています。
また、かつてはパジェロも生産していたことから、オフロード車や4WD車に関するノウハウは3社の中でも強みがあると考えられます。
経営の主体はホンダが担うべき
IRバンクによると、ホンダは2008年以降、リーマンショック時を除いて収益・営業利益ともに概ね右肩上がりで推移しています。
2025年3月は売上高は過去17年間で最高の21兆円を見通しており、営業利益も1兆4200億円を見通しています。営業利益率も6.76%となり、良好な業績と言えそうです(製造業の平均営業利益率は3.4%)。
その他、株主資本や利益剰余金などの純資産も堅調に伸びています。
一方、日産はカルロス・ゴーン氏退任後、収益・営業利益ともに伸び悩んでいる状況です。
2025年3月は売上高こそ過去17年間で最高の12兆7000億円を見通していますが、営業利益は1500億と、営業利益率は1.18%しかない見通しです。
日産はゴーン氏就任前の経営難に加え、ゴーン氏退任後も業績が悪化していることから、お世辞にも日産は経営が上手いとは言えない(または、経営者を育てるノウハウがない)でしょう。
これらを考慮すると、経営統合後はホンダ陣営を主体とする経営を行うべきでしょう。
日産の経営危機の原因については、下記の動画がわかりやすいです。
まとめ
短期的な目線で言えばホンダにとって、今回の経営統合はメリットが無いように感じます。経営統合後2〜3年は、単独経営の方が良かったと思える結果になる可能性が高いです。
しかし、日産や三菱のラインナップは、ホンダには無いようなものが多くあります。
3社が協力しつつ、棲み分けを行うことができれば、シナジー効果が大きいのではないかと思います。
ただし、経営上の課題は多数あると言えそうです。
ホンダが主体になるのは基本路線であるとして、グループ全体としてどのようにシナジー効果を引き出すか、生産拠点や人員整理をどのようにするかなど、今まで以上に高い経営手腕が求められるでしょう。
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